かつて、卒業式では男子学生が制服の第二ボタンを記念に贈り合う習慣が広く親しまれていました。
この風習は多くの人々の心に残る特別な思い出として存在していましたが、時代が令和へと移り変わる中で、徐々に姿を消しつつあります。
現在では、この伝統そのものを知らない学生も増えており、卒業式における記念品の選び方も変化しています。
では、現代の卒業式ではどのようなアイテムが交換されているのでしょうか？
この記事では、かつての第二ボタン交換の背景やその象徴する意味を振り返るとともに、現代における卒業式の新しい風習についてもご紹介します。
卒業式で第二ボタンを贈る風習の意味
卒業式で制服の第二ボタンを交換するという風習は、日本の学校でよく見られる特別な習慣です。
第二ボタンは制服の胸元、心臓に近い場所についているため、「心」を象徴すると言われています。
このため、誰かに第二ボタンを贈ることは、自分の深い愛情や特別な想いを相手に伝える行為とされています。
また、このボタンを贈る行為は、贈る側にとって大切な存在であることを意味するとともに、卒業という人生の節目に感謝や絆を伝える大切な機会となっています。
制服のボタンに込められた特別な意味
制服のボタンには、それぞれ特別な意味が込められています。
たとえば、第一ボタンは「個人」を表し、第三ボタンは「友情」を象徴、第四ボタンは「家族への愛」、そして第五ボタンは「社会とのつながり」を意味します。
中でも、第二ボタンは心臓に最も近い位置にあることから、特に「愛する人への深い感情」を伝える象徴として用いられることが多いです。
ブレザー式制服の普及による影響
日本の学生文化では、卒業式で第二ボタンを贈り合うことが伝統として広く親しまれてきました。
しかし、ブレザー式制服の普及に伴い、第二ボタンが必ずしも心臓に近い位置にないデザインも増えています。
そのため、近年では第二ボタンに代わる記念品として、ネクタイや校章、名札などを贈るケースが増えてきました。
これらのアイテムは、新しい時代における記念品として、従来の第二ボタンと同じように感謝や思い出を象徴するものとして受け入れられています。
卒業式で第二ボタンを渡す風習の由来
第二ボタンを贈る風習には、いくつかの由来が伝えられています。
その一つは、戦時中の若者が学生服を着たまま戦地に向かう際、もしもの事態に備えて大切な人に第二ボタンを渡した、というエピソードに由来すると言われています。
この行為には、愛する人への思いや別れの切なさが込められていました。
また、昭和35年に公開された映画『予科練物語 紺碧の空遠く』の影響も大きいとされています。
この映画の中で、特攻隊員が出陣前に恋人へ軍服の第二ボタンを手渡すシーンが感動的に描かれ、多くの人々の心に深く刻まれました。
これらのエピソードはどちらも、離別の悲しみや再会への願いを象徴しており、その想いが卒業式での第二ボタンを渡す風習として広まったとされています。
さらに、なぜ第二ボタンが選ばれたのかについては、第一ボタンを外すと見た目がだらしなくなるため避けられたことや、第二ボタンが胸に近く特別な意味を持つ位置にあることが理由とされています。
卒業式で第二ボタンの代わりに贈られるもの
近年の卒業式では、第二ボタンの代わりに贈られるアイテムが注目されています。
これは、ブレザー式の制服が普及し、第二ボタンが必ずしも特別な位置にないデザインが増えたことが背景にあります。
その代替として人気を集めているのが、ネクタイや校章、名札などのアイテムです。
これらは、学生生活を共に過ごした大切な人や憧れの相手が使用していたものとして、特別な記念品として選ばれることが多くなっています。
また、卒業式後に友人たちと記念写真を撮ったり、花束を贈り合って写真を残すことも、思い出を形に残す方法の一つです。
さらに、制服を空に投げるシーンを動画や写真に収めることで、卒業の感動をより鮮やかに記録する人も増えています。
普段はスマートフォンの使用が制限されている学校でも、卒業式の日だけは特別に撮影が許可されることが多く、この特別な日に思い出を記録する光景があちこちで見られます。
まとめ
卒業式で第二ボタンを贈り合う伝統が薄れつつあることに驚く人もいるかもしれません。
しかし、お子さんがいる家庭では、この風習がいまだに受け継がれている場合もあるでしょう。
現代ではSNSの普及により、卒業式の思い出の残し方が以前とは異なり、常に新しい形へと変化しています。
大切なのは、卒業する生徒たち自身がその瞬間をどのように受け止め、感じるかということです。
友人や仲間との交流を通じて、卒業の記憶をどのように心に刻むか。その形はこれからも進化し、多様化していくことでしょう。
